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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.228

“運命の女”との再会、そして“神”との対話……。さらば自分探しの旅『キス我慢選手権 THE MOVIE』

kiss_gaman01.jpg美女たちのキス攻撃をかわしながら24時間アドリブを続ける劇団ひとりこと川島省吾。壮大な実験映画として「キス我慢選手権」が帰ってきた。

 中田英寿をはじめ多くの若者たちが自分探しの旅に出た。はたして旅先で本当の自分を見つけて帰ってきた人はどれだけいるのだろうか。求めていた理想の自分に出会えないまま、旅を終われずに若さを消耗していく人も少なくない。深夜番組から生まれた映画『ゴッドタン キス我慢選手権 THE MOVIE』はまさに究極の自分探しの旅だ。なにしろ映画の主人公である劇団ひとりこと川島省吾は自分が何者であるのかをいっさい知らされていない。これから自分にどんなストーリーが待っているのかも分からない。24時間にわたって省吾はアドリブ演技を続け、共演者たちの言動から自分が何者であるかを探りながら物語を転がしていかなくてはならない。物語を切り開いていくことで、省吾は旅の終わりに「自分は何者なのか?」という明快な答えに遭遇する。リアルとフィクションとの境界線を突っ走る痛快なメタフィクション・ロードムービーなのだ。

 2005年にスタートし、ロングラン人気を誇る深夜バラエティー『ゴッドタン』(テレビ東京系)の中でも「キス我慢選手権」はひと際熱い支持を集める名物企画だ。開始当初は制限時間(60分)をお笑い芸人たちはセクシータレントたちのキス攻撃に耐えられるかというシンプルな企画だったが、劇団ひとりがストイックな別人キャラクターに変貌し、美女の誘惑から逃れるアドリブ演技が評判となり、DVD化。シリーズ化されたDVDのセールスも好調で、調子に乗って劇場版まで作ってしまった。「未来はアドリブで変えられる」が劇場版のキャッチコピーとなっている。劇団ひとりのアドリブ演技が一本の深夜バラエティーの歴史を大きく変えたといっていいだろう。

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